
はじめに
日向「冴島さん、事業計画書を書こうとしたんですけど…」
冴島「どうしました?」
日向「公庫のフォーマットをダウンロードして、上から順番に埋めようとしたんです。でも、『創業の動機』のところで30分くらい固まって、結局何も書けずに終わりました…」
冴島「あー、それは典型的な失敗パターンですね」
日向「やっぱりダメなんですか…」
冴島「いきなりフォーマットを埋めようとするのは、設計図なしで家を建て始めるようなものです。途中で手が止まるのは当然ですし、仮に埋めたとしても前後で矛盾だらけの計画書になる」
日向「じゃあ、どうすればいいんですか?」
冴島「事業計画書の作成には『正しい手順』があります。今日はそれを教えましょう」
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📌 この記事でわかること
融資審査の70%を左右する事業計画書の作り方を解説します。
- いきなりフォーマットを埋めてはいけない理由
- 事業計画書作成の3ステップ(思考整理→リサーチ→落とし込み)
- 9つの項目で思考を整理する方法
- 金融機関が評価する8つの視点
「埋める」作業ではなく「まとめる」作業にするための正しい手順を身につけましょう。
事業計画書が融資の成否を左右する理由
日向「そもそも事業計画書ってそんなに大事なんですか? 面談で熱意を伝えれば…」
冴島「日向さん、融資審査の何割が事業計画書で決まると思います?」
日向「うーん…半分くらい?」
冴島「70%です」
日向「70%!? そんなに…」
冴島「理由は3つあります」
事業計画書が重要な理由①:面談の「質」を決める土台だから
冴島「担当者は面談前に事業計画書を読み込み、質問事項を準備します。しっかりした計画書があれば、面談は『確認』の場になる。逆に計画書がダメだと、面談は『追及』の場になります」
日向「追及…怖いですね」
事業計画書が重要な理由②:数字は「信用」そのものだから
冴島「計画書の数字に矛盾があったり、根拠が曖昧だったりすると、経営者としての信頼性が大きく損なわれます」
日向「数字の甘さは見抜かれるんですね…」
冴島「金融機関はリスク管理のプロです。私も以前、相談者の計画書を見た瞬間、『これは5箇所くらい突っ込まれるな』と分かることがあります。審査担当者なら一瞬で見抜きます」
事業計画書が重要な理由③:あなたの代わりに「独り歩き」するから
冴島「金融機関内部では、担当者が作成した稟議書が上司や本部へと回覧されます。実際にあなたと面談していない審査官も、事業計画書を見て判断するんです」
日向「自分がいない場所でも見られるんですか」
冴島「事業計画書は、あなたがいない場所であなたの代わりにプレゼンしてくれる『分身』です。この分身が頼りないと、どれだけ面談で熱意を語っても覆せません」
事業計画書を作る前にやるべきこと
日向「じゃあ、どうやって作ればいいんですか?」
冴島「まず理解してほしいのは、事業計画書作成は3つのステップに分かれるということです」
日向「3つのステップ?」
冴島「1つ目は『思考の整理とアウトプット』。フォーマットを使わず、まずは頭の中のアイデアを書き出す。2つ目は『リサーチによる肉付け』。書き出した内容に客観的な裏付けを取る。3つ目が『計画書への落とし込み』。集めた材料を文章と数字で整える」
日向「いきなり書き始めちゃダメなんですね」
冴島「ステップ1と2を飛ばすから、途中で手が止まるんです。逆に言えば、この2つをしっかりやれば、計画書は『埋める』のではなく『まとめる』作業になります」
9つのステップで思考を整理する
冴島「最初のステップは、頭の中にある情熱やアイデアを『形』にする作業です」
日向「具体的にどうすればいいですか?」
冴島「この段階ではフォーマットを使いません。ノートやメモ書きで構いませんので、9つの項目を書き出してください。『想い』『仕組み』『数字と未来』の3つのフェーズに分けると整理しやすいです」
フェーズ1:想いと根拠(過去〜現在)
冴島「まず最初の2つは、あなたの『想いと根拠』です。①創業動機——なぜこの事業を始めるのか。単に『儲かりそうだから』ではなく、あなたの原体験に基づいた理由が必要です。②経歴・経験——『なぜあなたがやるのか』の根拠。これまでの職務経歴や人生経験の中で、この事業に活かせる強みは何か」
日向「創業動機って、『カフェが好きだから』じゃダメですか?」
冴島「それだけでは弱いです。『なぜカフェが好きになったのか』『どんな体験がきっかけだったのか』まで掘り下げる。面談で『なぜ?』を3回繰り返されても答えられるレベルが理想です」
フェーズ2:ビジネスの仕組み(現在)
冴島「次の4つは、ビジネスの仕組みに関することです。③商品・サービス——『カフェを開く』ではなく、『朝7時から焼きたてのスコーンとスペシャリティコーヒーを提供するカフェ』というレベルまで具体化する。④ターゲット顧客——『全ての人』は『誰にも刺さらない』のと同じ。顧客の顔が浮かぶまで絞り込む。⑤販売戦略——集客から販売までの動線を設計する。⑥競合優位性——他社にはない、あなただけの『ウリ』を言語化する」
日向「ターゲットって、具体的にどれくらい絞ればいいんですか?」
冴島「例えば『30代女性』ではまだ広い。『渋谷で働く30代の女性会社員で、朝の出勤前にゆっくりコーヒーを飲みたいけど、チェーン店は混んでいて落ち着かないと感じている人』。このくらいまで絞れると、販売戦略も自然と決まってきます」
フェーズ3:数字と未来
冴島「最後の3つは、お金と将来のビジョンです。⑦必要資金——開業に何にいくらかかるか漏れなくリストアップ。⑧売上予測——客単価×客数×営業日数など、根拠のある計算式で予測。⑨将来ビジョン——5年後、あなたの事業はどうなっているか。『ワクワクする未来』を描く」
日向「将来ビジョンって、具体的にどう書けばいいですか?」
冴島「『5年後に2店舗目を出したい』とか『地域で一番愛されるカフェになりたい』とか。夢物語でいいんです。ただし、そこに至る道筋が見えるかどうかが大事です」
一貫性の確認が最重要
日向「9つ書き出せばいいんですね」
冴島「書き出したら、全体を見渡してください。最も重要なのは『一貫性があるかどうか』です。『動機』と『商品』はずれていないか、『ターゲット』と『販売戦略』は噛み合っているか、『売上予測』と『必要資金』に矛盾はないか」
日向「矛盾があると、どうなるんですか?」
冴島「例えば、『健康志向の人をターゲットにする』と言いながら、『揚げ物中心のメニュー』を計画している。こういう矛盾があると、担当者は『この人、自分の事業を理解してないな』と判断します」
日向「確かに、それはおかしいですね」
冴島「この9つが一本の線でつながった時、初めて説得力のある事業計画書が完成します」
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📌 9つの項目で思考を整理する
いきなりフォーマットを埋めず、まず以下の9項目をノートに書き出しましょう。
フェーズ1:想いと根拠(過去〜現在)
①創業動機 ②経歴・経験
フェーズ2:ビジネスの仕組み(現在)
③商品・サービス ④ターゲット顧客 ⑤販売戦略 ⑥競合優位性
フェーズ3:数字と未来
⑦必要資金 ⑧売上予測 ⑨将来ビジョン
書き出したら「一貫性があるか」を確認。9つが一本の線でつながっていれば、説得力のある計画書が完成します。
金融機関が評価する8つの視点
日向「金融機関はどこを見ているんですか?」
冴島「審査担当者は事業計画書を8つの視点で見ています。論理的一貫性、市場性、独自性、実現可能性、安全性、収益性、成長性、返済可能性」
日向「8つもあるんですね…全部満たさないとダメですか?」
冴島「最終的に金融機関が知りたいのは一つだけ。『貸したお金が、利息とともに確実に返ってくるか』。この一点に尽きます。8つの視点は、それを確認するためのチェックポイントです」
別紙の重要性
日向「公庫のフォーマットって、結構シンプルですよね」
冴島「A3用紙1枚程度の非常にシンプルなものです。あの枠の中にビジネスのすべてを書き切ることは物理的に不可能です」
日向「じゃあ、どうすれば…」
冴島「そこで必要になるのが『別紙』です。伝えきれない思いを届けるため、図解や写真で事業内容を正確に理解してもらうため、売上の根拠を論理的に示すため。私の経験では、5〜10ページくらいが多いです。重要なのは、審査担当者がその資料を見ただけで、あなたの事業の成功をイメージできるかどうかです」
まとめ
日向「なるほど…まずはノートに9つの項目を書き出してみます」
冴島「それがいいです。フォーマットに向かう前に、まず自分の頭の中を整理する。これだけで計画書の質は格段に上がります」
日向「ちなみに、9つ全部書き出すのにどれくらい時間かかりますか?」
冴島「人によりますが、数日から1週間は見てください。特に売上予測や競合調査は、しっかりリサーチが必要です。焦って適当に埋めると、面談で全部バレますよ」
日向「了解です。じっくりやります」
冴島「事業計画書は、単なる申請書類ではありません。あなたの事業が成功することを証明するための『設計図』です。丁寧に作り込んでください」
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✅ この記事のまとめ
融資審査に通る事業計画書の作り方を解説しました。
- 融資審査の70%は事業計画書で決まる(面談の土台、数字は信用、独り歩きする分身)
- いきなりフォーマットを埋めず、まず9つの項目で思考を整理する
- 「想い」「仕組み」「数字と未来」の3フェーズで構成する
- 9つの項目が一本の線でつながっているか確認する(一貫性が最重要)
- 公庫フォーマットでは伝えきれない内容は別紙で補足(5〜10ページ目安)
計画書は「埋める」作業ではなく、整理した思考を「まとめる」作業です。
